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【マレッツコラム】11/9(土) vs.木下アビエル神奈川『勝利への天秤』

コラム

11/9(土) 日本ペイントマレッツ 3-1 木下アビエル神奈川
【第1マッチ(ダブルス)】橋本 帆乃香・佐藤 瞳 2-0 木原 美悠・リ ジンシカ(11-8/11-8)
【第2マッチ(シングルス)】芝田 沙季 2-3 長﨑 美柚(11-9/10-11/3-11/11-10/10-12)
【第3マッチ(シングルス)】横井 咲桜 3-2 面手 凛(9-11/11-7/10-11/11-10/11-7)
【第4マッチ(シングルス)】橋本 帆乃香 3-0 木原 美悠(11-8/11-7/11-9)

アウェイの地、川崎。どんなドラマが生まれるのかというワクワクと同時に、相性のよくない敵地ということもあり一抹の不安を抱いていたが――

開幕して10試合目でやってきた昨シーズン1位木下アビエル神奈川との1戦は、試合時間が約2時間50分と予想を遥かに超える激戦となった。そんな戦いを制し、開幕からの連勝を“10”にのばしたのはマレッツだった。試合前、大嶋監督はこう話していた。「ダブルスが取れるかどうかで試合の流れが変わってきます。特に木下戦は、ダブルスがとれるかどうかで勝敗が左右されると思います」と。その言葉通り、意外にも今シーズン初登場の“ひとほの”ペアが流れを生み出した。

「WTT(国際大会)など普段の試合とは違って、短期決戦なのがTリーグでのダブルスの難しいところです。予想とは違うことが起きるのがTリーグのダブルスだなと思っています」と佐藤選手。橋本選手も短期決戦といえるTリーグ方式について「作戦を立ててもそれを実行出来るかどうか分からないんです。賭けの要素が多いと思うので、いつも以上の緊張感は少なからずありましたね」と話した。2ゲーム先取という特殊なルールの攻略にどう挑んだのか、大嶋監督は試合後2選手へ話したことを教えてくれた。「普段の試合と同じように相手の様子を伺いながら戦っていては、Tリーグのダブルスは勝てません。1ゲーム目からリスクを背負っても攻めていくことを話していました」「最初から狙えると思ったところは攻めていくように言われていましたし、佐藤さんとも連携をとって攻撃の展開でも得点を重ねられたと思います!」と橋本選手。“攻める、仕掛ける、ミス待ちしない”その意識がひとほのペアにあったからこそ、最終的には2-0というスコアとなり、マレッツ勝利への天秤に最初のおもりをのせられた。
そして、この試合互いに声をかけている姿がいつも以上に見受けられた。「それも短期決戦なことが理由なんですけど、試合の流れやその動きが早い中で、今までその波のスピードについていけていないことが多かったんです。それにその時に攻めるのか守るのかを迷うことも多かったので、話しながらやることが大事だと思っていました」と佐藤選手。何年もの間ペアを組んでいても、阿吽の呼吸ですら乗り越えられない程、ダブルス勝利の山は想像以上に高いようだ。

最後に、筆者が気になったことも聞いてみた。各ゲームに入る前に軽く手と手でタッチしていたことだ。昨シーズンは見られなかった姿だった。「今年WTTに行ってからですかね?!あんまりこうしようとか話してはないんですが、自然と始まってルーティンになったような気がします!ホント始まりを覚えてないです(笑)」と佐藤選手。橋本選手も「おそらくWTTでハイタッチするようになって、なんとなくそのまま変えずにハイタッチするようになったと思います。お互いアイコンタクトとった時に自然の流れでハイタッチするようになりました!笑」と始まりはわからないようだ。長年ペアを組む“ひとほの”ペアが、様々な経験を積み重ね、また一皮剥けたように感じた。

この試合、それぞれのマッチごとに勝利の天秤が大きく何度も揺れ動いていた。最終的にどちらに傾くのか、最後の最後までわからず、手に汗握る展開が続いた。「すいません」そんな言葉を発したのは、2-3で苦杯を喫した芝田選手だ。自分が勝っていたら勝ち点4だったのに、もっとよい流れで第3マッチにバトンを渡せたのに—— 真意はあえて聞かなかったが、その一言には重みを感じていた。
今日の試合、芝田選手は相手に流れが傾いていてもなんとか引き戻そうとくらいついているように感じた。何かそういう意識があったのか尋ねてみた。「そうですね…諦めない気持ちという部分だけでいくといつもとは変わらなかったです。ただ、考え方は変えていて、試合全体の組み立ては考えつつ、目の前の1球に集中して1点をどう取るかというのだけを考えていました。いつもは色んなことが気になってしまうんです。ミスしてしまったことを考えてしまったり、逆に先のことを考えて迷ってしまったりするところがあったのですが、無駄な情報をできるだけ入れないイメージで試合ができた感じです。後は、オリックスの平野佳寿投手意識で、悔しがって切り替えるという表情はちょっと意識してましたね。ただ、この前の(11/3)九州戦で負けたダブルスと負け方自体は変わらなくて、戦術や組み立ての部分で相手を上回れなかったというのが全てかなと思ってます」人の心を動かせるプレーができても、プロとしては勝つことを求められるシビアな世界だ。そのことをよく解っているからこそ、あの一言を発したのだろう。

何度も揺れ動いてた天秤は、マレッツが勝利へのおもりを積み重ね、開幕からの連勝がついに2桁となった。どの選手も「目の前の試合必死になっていたらいつの間にかこうなった」と発している。現在、24-25シーズンという“山”は4合目あたりで、まだまだ『頂』までの道のりは長い。目の前の険しい崖にも挑んでいってこそ最も美しい景色を目にすることができる。さあ、ここからが勝負だ。

Text by Naoco.M / Photo by T.LEAGUE/AFLO SPORT

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