9/21(土) 日本ペイントマレッツ 3-2 九州アスティーダ
【第1マッチ(ダブルス)】横井 咲桜・大藤 沙月 1-2 出澤 杏佳・首藤 成美(11-10/10-11/9-11)
【第2マッチ(シングルス)】橋本 帆乃香3-0 山室 早矢(11-4/11-10/11-10)
【第3マッチ(シングルス)】佐藤 瞳 1-3 出澤 杏佳(4-11/11-9/7-11/3-11)
【第4マッチ(シングルス)】大藤 沙月 3-2 田口 瑛美子(10-11/11-5/11-4/7-11/11-7)
【ビクトリーマッチ】橋本 帆乃香 1-0 田口 瑛美子(11-8)
勝負事は実際にやってみなければわからないものだ。Tリーグには特有のルールがある。それは、その“やってみなければわからない”を何層も押し上げているように感じる。そう、必ずしも世界ランキングが高い選手(モノ)が勝つとは限らず、下剋上の可能性を秘めている。今シーズン初のホームゲームは、そのTリーグ“独自ルール”がマレッツを翻弄していた。
2022-2023シーズンぶりにTリーグへ帰ってきたのが、大藤選手・横井選手のダブルスペアだった。現在、このペアの世界ダブルスランキング(2024年9月時点)は5位。木下アビエル神奈川の木原選手・長崎選手ペアの4位に続くランキングである。そんな進化を続けるペアの登場に心が躍ったのは、筆者だけではないだろう。どんな相手を圧倒したプレーを繰り広げてくれるのだろうか…!2ゲーム目の8-3までは、予想通りの展開だったに違いない。幾度となく卓球の恐ろしさとも言える楽しさを目の前で見てきたが、今回もそれだった。そして、Tリーグ独自の“デュース(※)なし”と“最終ゲームは6-6からスタート”というルールが立ちはだかったのだ。「Tリーグのダブルスの戦い方は難しい…」2選手をみる坂本コーチはそう話す。「WTT等は通常5ゲーム(3ゲーム取ったペアが勝利)とは違って、3ゲームしかなくて、更に3ゲーム目は6-6からっていうのは、いつもの戦い方とは違ってくるんです。それに1ゲーム目の10-9でタイムアウトを使ってしまっていたので、タイムアウトも取れなかった。タイムアウトを取って流れを変えていきたかったが…」と続けた。あえて2選手にもこの試合について尋ねてみた。「うーん、リードしてはいたんですけど、なんかしっくりきてなかったです。久しぶりに(横井選手と)二人で組んでのTリーグだったんで、緊張していたのもあるかもしれません」と大藤選手。横井選手は「WTTの試合を重ねていたんで、これまでみたいに試合前は緊張しなかったんですけど、何故かコートに入ってから緊張していました。5ゲームでデュースあると、また全然違う流れでいけたと思うんですけど、このTリーグ独自のルールだと、10-10で1本しかないので攻めていかないといけないんですよね…」と話してくれた。思わぬ壁が立ちはだかったが、ここで終わる二人ではないはずだ。
2時間半を超える戦いに終止符を打ったのは、橋本選手だった。会場の応援を味方につけ、ビクトリーマッチを制した。ビクトリーマッチの相手は田口選手。第4マッチで大藤選手に競り負けたものの、体が温まっている状態だ。第2マッチから時間が経過している橋本選手の方がやや不利に思えたが、そのことについて聞いてみた。「おそらく田口選手だろうと思っていたので、体が動くように体を温めてから試合に入ることを第一に考えていました。勝ったのでよかったのですが、試合後には大嶋監督から体を温めることばかり考えてアップに行くのが早すぎる!ビクトリーのオーダーがバレてまうやろ!と言われてしまったくらいです(笑)」相手の調子がよいということもあり、ビクトリーマッチに勝利した時には、安堵と喜びが交じった表情を浮かべていた。それは、絶対に負けられない2試合で、とも勝ち切ったこともあるのだろう。第2マッチこそ、橋本選手がTリーグ“独自ルール”をしっかりとモノにしていたように思えた。スコアこそ3-0だったが、2ゲーム目、3ゲーム目ともに10-10となっていたのだ。「自分自身もどのボールを狙うか定められず色々なボールに手を出してしまったことで、相手の変化に翻弄されてしまったなという印象でした」苦戦している様子だったが、10-10となったところで“1本”を取れる攻めの姿勢と自分自身への信頼。何よりホームゲームという重圧を力に変えられる経験こそ、Tリーグルールを攻略する糸口なのかもしれない。
開幕3連勝となったマレッツだが、早速1枚目の壁が表れた。これまでのシーズンはその壁に阻まれていたが、今シーズンは何とかよじ登り超えていった。まだ「頂」への旅路は始まったばかりだ。これからも色々な“壁”が出現し喜怒哀楽のドラマが生まれることだろう。それをも一緒に一喜一憂していただきたい。(Text by Naoco.M / Photo by Yusuke Nakanishi)
(*)10-10となった場合2点差の決着がつくまで試合が行われるルール
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