日本ペイントマレッツ 3-2 木下アビエル神奈川
【第1マッチ】芝田 沙季・大藤 沙月 1-2 木原 美悠・長﨑 美柚(9-11/11-6/7-11)
【第2マッチ】橋本 帆乃香 3-0 チャン ルイ(11-4/11-8/11-6)
【第3マッチ】横井 咲桜 3-1 平野 美宇(11-5/11-4/3-11/11-8)
【第4マッチ】大藤 沙月 0-3 張本 美和(6-11/10-11/9-11)
【ビクトリーマッチ】横井 咲桜 1-0 木原 美悠(11-9)
あの悪夢(*)から1シーズン。スローガンである“超”を胸に秘め、ここまでやってきた。奇しくも同じ守口でのレギュラーシーズン最終戦。“女王”との戦いは、いつもホームアドバンテージが作用するところを今シーズンは何度も見てきた。そう、マレッツには追い風だった――
チームはプレーオフ進出を決めたが1か月以上勝ち星がついていない選手がいた。横井選手だ。「(1月14日の試合から)4連敗だったんですよ(笑)」試合後、満面の笑みでさらりと言った。「自分自身の負けの1点がチームに影響していると感じていました。でも先輩方や大藤・青木が頑張ってくれたお陰でプレーオフにいけたので本当にホッとしました。頭があがらないですね…。ただ、負けをプラスに捉えて次に向けて準備していました」と横井選手。坂本コーチにも聞いてみた。「大事なのは目の前の一戦にベストを尽くすということなので、何連勝、何連敗とか僕自身も気にしてないですね。試合後にその試合について話すことはしますが、次の日に前の試合のことを話してももう戻ってこないですし、相手も変わる。だからこそ次に向けて準備するだけだと話しています。横井のよいところは負けて落ち込むのではなく、反省を言えるところです。それに割り切れるんで引きずってないですよね。負けを学びに変えられると思っています」1月からの負けは横井選手が変化している証でもあった。坂本コーチ曰く、この先を見据えて色々と変えているそう。前日のトップ戦では安藤選手に負けたものの、少し成果が出る頃だと思っていたようだ。「(第3マッチは)自分のやることは明確だったので、今シーズン平野選手と3回目の対戦でしたけど嫌な感じはありませんでした。ただ、相手も対策をしてくると思ったので、そこを少し警戒していましたが、自分の戦術がうまくハマって勝つことができました!」と横井選手。坂本コーチに4ゲーム目の10-8(横井選手リード)でタイムアウトをとった意図を尋ねてみた。「ここは明確に伝えたいことがあったのでとりました。タイムアウトとるのめっちゃ早かったでしょ?(笑) 基本的に(戦術は)選手が決めることなんで、僕のアドバイスを選択してもしなくてもいいと思っていて言い切ることはしないんです。やるのは本人で迷わずやることが重要ですからね。でも、この場面はコースや回転なども指定して言い切りました。経験からくる感覚ですね。ちょっとした自信はありました。それに、横井選手はここで怖がらずにそれを実行する能力があるんで、だからこそ言い切れたのもあります」11点目を取った横井選手がマレッツに2点目をもたらした。
2-2と同点となりビクトリーマッチに登場したのも横井選手だった。「前回の木下戦と同じ様な展開になったので“勝っているときは変えない”セオリーと平野選手に勝ちきった勢いに賭けました。木下としても横井の方が嫌なのではというのもあり、横井自身も前日の悔しい思いを糧にしてくれるだろうという期待もありました」と大嶋監督はビクトリーマッチ起用について話してくれた。試合が決まるビクトリーマッチ。その責任は重すぎるように思うが、横井選手はそう思っていないそうだ。「自分自身すごくワクワクしていました。緊張はもちろんありましたがそれ以上にワクワク感があって。なんでか分からないんですけど、ベンチにみんなが揃って試合することってなかなかないじゃないですか?そんな中で試合ができて、盛り上がる感じが好きなんです!めちゃくちゃ一丸となって、みんなで頑張ってるなって感じるんです!!それにこんな大勢の皆さんの前で試合ができることが凄くありがたいなと思ったんですよね」筆者は思わず笑みがこぼれ“大物だ…”と呟いてしまった。坂本コーチも試合前は戦術的なことは言わなかったそうだ。「1ゲームなんで守りに入らず攻めることは言いましたけど、横井の勢いに預けましたね」木原選手とはこれまで分はよくなかったが、横井選手が点数を重ねてリードして試合を進める。しかし流石の木原選手。9-6と3点リードするも追いつかれ9-9となった。それでも横井選手は冷静だった。「自分のサーブで2本失点してしまったんですけど、相手はロングサーブで勝負をしてこないと思ったので、短いサーブ8割という感覚で待って、焦らずにプレーできました。まずは一点取れたら流れがこっちにくると思ったので、まず一点取ることに集中していましたね。自分がマッチポイントを握ったときは、正直とても手に汗をかいていました。あと一本取れればチームが勝てるという状況だったので凄く緊張しました。でも、自分の中でなぜか分からないのですが、少し自信があって最後の一本も思いきっていけました」横井選手がマレッツに3点目をもたらしホーム最終戦に花を添えた。これでビクトリーマッチは3戦3勝の横井選手。最後にこんなうれしい言葉を残してくれた。「Tリーグが楽しいです!!」
今日の試合は特に、終始自然と湧き出る拍手に何度も鳥肌が立った。特にビクトリーマッチで9-9と横井選手が追い付かれた場面では、大きな拍手が会場全体を包んだ。10-9。横井選手が1点リードを、アリーナDJのかけ声ととともに応援の拍手が横井選手の背中を押す。そして11点目。それが最高潮に大きくなり、会場全体が張り詰めた空気から解き放たれ、横井選手とともに観客の皆さんの頬も緩んだ。コートに立てる選手は限られているかもしれない。でも、わたしたちは一人ではない。立ちはだかるプレーオフの山もともに“超”えていこうではないか――
Text by Naoco.M Photo by Yusuke Nakanishi
(*)22-23シーズン最終戦に敗戦し、勝ち点は同点だったものの獲得マッチ数1差でプレーオフ進出を逃した
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