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【マレッツコラム】1/7(日) vs.日本生命レッドエルフ

試合

エースとは――

1/7(日) 日本ペイントマレッツ 1-3 日本生命レッドエルフ

【第1マッチ(ダブルス)】芝田 沙季・大藤 沙月 1-2 ソン メイヨウ・ソン イジェン(11-6/2-11/10-12)
【第2マッチ(シングルス)】大藤 沙月 1-3 ハン シキ(11-9/5-11/9-11/8-11)
【第3マッチ(シングルス)】横井 咲桜 2-3 赤江 夏星(11-9/6-11/11-10/8-11/7-11)
【第4マッチ(シングルス)】橋本 帆乃香 3-0 ソン メイヨウ(11-5/11-7/11-8)


悔しさ残る一戦から一夜明けた新潟。一面雪景色が広がると思いきや雪の形すらなく、冷たい雨が降っていた。予想とは違う朝に戸惑いをおぼえた。ボタンを掛け違えたような――そういう不穏な予感は当たってしまうものだ。

「うーん、(オーダーが)ちょっと外れたかな」オーダー発表後に珍しくこんな言葉が大嶋監督から返ってきた。「相手はダブルスを変えてきましたね。やっぱり大事なのはダブルス。ダブルスが取れるかどうかは勝負を大きく左右するので…ね」木下戦からベンチに入っている坂本コーチ曰く、ダブルスをとったチームが約75%勝利を手にしているという。数字に表されるとなおさら説得力がある。だからこそ何とかこのマッチを取りに行きたいと考えに考え抜いて“ペア”を選択するのだろう。送り出されたのは“おおしば”ペア。今日の敗戦で5連敗とトンネルから抜けだせない。「連敗していてその負けている流れが出てしまったと思います。消極的なプレーを選択することになって結果的にあと少しのところで落としてしまいましたね…」と芝田選手。何故消極的な選択になってしまっているのか聞いたところ、こう返ってきた。「やるかやらないかではなく、相手が強いからこそ自分たちがやりやすい形に持っていきたいかどうかで選択してしまったからですかね…。もちろん勝ちたいんですよ」と肩を落とした。ペアを組む大藤選手は「一つ勝ったらうまくいきそうな気はしてるんですけどね。色々と思考錯誤している中なんですけど、負け続けているとやっぱり自信がなくなってしまうんですよね。2人とも自信ないのかな…。昨日(木下戦)のシングルがよくなかったので、今日のダブルスは絶対取ろうと思っていたんですけどね」と悔しそうに話した。

大藤選手は“エース”として第2マッチのシングルスも託されていた。「最近はダブルスで負けていても切り替えてシングルスに臨めていたんですけど、いつもとちょっと違う感じがしていて…。切り替えがうまくいかなかったです。昨日(1/6木下戦vs.木原選手)は、前の3連戦での調子がよかったことやいい練習ができていたこともあって自信をもって臨んだんですけど、簡単に負けてしまって…。新しい負け方というか…。今までと同じように練習していてもダメで、もっとチャレンジしていかないといけないと思いました。現状維持になってしまっていました。昨日は足も頭も動いていなかったので、今日は体のキレを戻す準備をしていましたし、昨日の反省を生かして…とは思っていたんですけど…。相手ももちろん強いので一つの戦術で勝てるほど甘くないなと痛感しました。一つのことにこだわってしまった感じはあります。ベースがやり辛いということもあったんですけど、やりにくい中で戦術を変えるのが難しかったというか、変える自信がなかったんです。これも経験と思って、それを糧にやっていくしかないです」と木下戦に続くシングルスの敗戦を振り返ってくれた。

そんな“エース”をどう見ていたのか。大嶋監督に尋ねると厳しい言葉が返ってきた。「もちろんダブルスは残念だったんですけど、結果云々よりも今大藤選手に欠けているところが如実に出てしまったと思っています。謙虚さが足りない。もう末っ子選手ではないんでね。ダブルスとシングルスともに出られるチームの“エース”と自覚して振る舞うところまで求めています。今日はがっかりしてしまいました…」大嶋監督のいう謙虚さとは――「まず、団体戦なのに一人で試合していましたよね。うまくいかない時こそ、会場を味方につけることがTリーグでは特に大切だと思うんです。試合中にうまくいかない時の振る舞いや表情が出ていて、相手にも観客皆さんにも伝わってしまっていたと感じました。地震が起こった中でもこうやって卓球の試合をさせてもらって、2試合出させてもらうことに感謝する気持ちがあればもう少し違う振る舞いになったと思います。苦しいときこそ、思い通りにいかない時こそやれることがあると思うんです。動き回って声を出すなど大藤選手が苦手なことをやっていくと会場の雰囲気や空気が変わります。例え負けてしまったとしても、全然違うと思うんですよね。例えば芝田選手だと、負けていても会場の人たちが何とか応援しようという雰囲気を作るじゃないですか。声出したりとか振り返ってガッツポーズしたりとか、ちょっとしたことなんですけど、チームの空気を作ってくれていました。 2試合に出場する“エース”はチームとしての空気も作っていかなければならないと思っていますし、そこまで求めています。お姉さんたち(佐藤選手・芝田選手・橋本選手)に任せてしまっていてはダメなんです。あとは、試合前の準備、気持ちの作り方ですね。相手は世界ランキングで上の相手なんだから、うまくいかなくて当たり前なんですよ。おそらく今日の大藤選手は“うまくいかなくて当たり前”という前提で準備していなかったように思います。世界チャンピオンではないのだから、謙虚に“うまくいかなくて当たり前”という前提で気持ちを作っていかないと。わたしたちもこのことを伝えきれていないから大藤選手が今この状態なんです。だから、もちろん自分たちにも原因はあるとは思っています。ただ、期待が大きいだけに求めてしまうのもありますよね。選手を育てていくのは本当に難しいです…」今シーズン一番の熱が籠った数々の言葉は“エース”への期待に満ちていた。

この言葉を受けて大藤選手が思うところはあるだろう。それでも、この言葉は本当に期待されている選手に対してしか出てこない。思えば、今シーズンの初陣にも厳しい言葉を大嶋監督は放っていた。監督だけではない。コーチ陣も含め、皆大きくなってほしいという想い、想いだけでは表現に収まらない “愛”がそこにあると感じるほどで、きっとそれは大藤選手にも伝わっているはずだ。重たい荷物を背負って勝つことの難しさは、その使命を与えられた本人にしかわからない。それを眺めているしかできないこともまたもどかしいものだ。試合が終わる頃には今朝と全く異なる場所にいるかのように雪化粧した景色が広がっていた。今日の天候のように朝の雨が雪へと変わり、景色も大きく変わるようにはいかないかもしれない。しかし、些細なきっかけで歯車がかみ合い昨日と今日の景色が全く異なるようにみえることもあるだろう。今日がそういう日だったと答え合わせができるのは、桜が咲き始める頃になる――

Text by Naoco.M/Photo by T.LEAGUE/AFLO SPORT

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