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【マレッツコラム】11/4(土) vs.木下アビエル神奈川

試合

成“超”の階段 その弐

日本ペイントマレッツ 3-2 木下アビエル神奈川
【第1マッチ】芝田 沙季・大藤 沙月 2-0 木原 美悠・長崎 美柚(11-8/11-8)
【第2マッチ】横井 咲桜 3-1 平野 美宇 (11-9/11-5/8-11/11-10)
【第3マッチ】大藤 沙月 1-3 張本 美和(8-11/7-11/11-10/9-11)
【第4マッチ】佐藤 瞳 1-3 木原 美悠(11-10/6-11/7-11/10-11)
【ビクトリーマッチ】横井 咲桜 1-0 張本 美和(11-9)

何かを予感させる朝を迎えた。相手は昨シーズン一度も勝てなかった、女王・木下アビエル神奈川。それでも何か、何かやってくれるんじゃないか―― そう思える11月の温かい朝だった。

オーダーが出た瞬間“面白い試合になる”と筆者はとてつもなくワクワク感に包まれた。思わず大嶋監督に声をかけた程だった。「狙い通りのオーダーです」と昨日とは全く違う表情だった。「まずはダブルスですね。ここを取って勢いに乗れるかが鍵ですね。それぞれがどれくらい成長できているか確認できる対戦だと思います。相手の選手たちは海外から戻ってきたばかりで、体調のアドバンテージはこちらにあるもののガチンコ勝負ですよね」力強い言葉が大嶋監督から返ってきた。結果は――

第1マッチのダブルスが終わった瞬間、3シーズン観てきた中で一番の笑顔をみせたのが芝田選手だった。「ダブルスの中で今までで1番よかったと思います。メンタル面のコンディションもよくて」少し突っ込んで聞いてみた。「先週の敗戦後、大嶋コーチに色々と話してもらって、1週間自分なりに考え方を変えて過ごせたのがプレーに繋がったと思います。それに四天王寺の先輩である成本選手(京都)の姿をみて、年齢に関係なく挑戦しているところが凄いなと刺激になって。周りにいる人たちのお陰で前向きに考えられるようになりました。それもあって、これまでの形からワンランク上の試合ができた感じがして嬉しかったんですよね。チームにもよい流れを作れたかなと」芝田選手の考える“ワンランク上”とは何なのか?「今まではどちらかというと消極的なプレーや選択が多かったんですよね。今日は攻撃的なプレーでいけて。お互いシングルスをやっている感じというか…お互いのシングルスの力がうまくマッチした感じです。私としては今日のダブルスはかなり理想に近いです。と言っても、大藤選手がめちゃくちゃいいプレーをした結果がこれです。スーパープレー連発でしたから(笑)」昨日の京都戦終了後、大藤選手と組むダブルスについてこんなことを話してくれた。「最初はうまくやらないと、私もしっかりやれればと思っていたんですけど、回数を重ねていくうちに基本は私がミスするし、入ったところで決めるのは大藤選手だと気付いたときに、うまくなろうとかなんとかしようとか思うのをやめました。勝つのも負けるのも大藤選手次第だと思っているので、そこを邪魔しないのがベストだって思えたんです。とはいえ、余計なことはしてしまうんですけど…(苦笑)秋田(8/11vs.九州)では今までで初めてじゃないかというくらいカバーしましたけど(笑)これは例外中の例外です。まあ大して信頼はされてないと思うんですけどね(笑)」そんな言葉を受けて大藤選手にも尋ねてみた。「芝田選手とのダブルスはやりやすい感じありますよ!自分が引っ張っている感じはないですけど(笑)私がやりやすいようにしてくれているのは感じます」と芝田選手の心がけは伝わっているようだ。「信頼?してますよ!!」と大藤選手。芝田選手の“大して信頼されていないと思う”という言葉を受けて尋ねてみたことを伝えると「まじですか(笑)」と大藤選手は笑みを浮かべた。吉田コーチにもダブルスについて聞いてみるとやはり「こんな試合は久しぶりで私自身も嬉しいです!」と喜びの声が。「今日は二人とも迷いがなかったように感じました。お互いを信じて自分のできる最大限のことをやるんだと徹底しているように見えました。なので、その流れに乗ってスーパープレーもでて…!最後は二人ともゾーンに入っているのではないかと思うくらいでした。よい試合ばかりはできないですが、今日の試合は二人にとっても自信になったと思います。その自信をどんどん二人のプラス要素にしてチームを引っ張っていってほしいです」と吉田コーチ。最後には「日頃、試行錯誤しながら頑張っている二人に今日は神様からサプライズプレゼントをもらえたのではないかな」そんな言葉を残した。2選手にとって大きな1段を超えた試合となった。

高い1段を超えた選手がいた。横井選手だ。ダブルスの勢いそのままに波に乗るだろうと試合前の横井選手を見てみると、いつも以上に緊張で顔がこわばっていた。筆者は試合直前にこちらから声をかけることはしない。しかし、どうしても見ていられなくて声をかけてしまったほどだった。「昨日負けての今日だったので、すごく緊張していてプレッシャーもありました。でも台についてその緊張がだんだんなくなってきて、しっかりと試合に集中できました」と横井選手。「昨日の負けは少し引きずっていたんですけど、すぐに切り替えることはできたと思います。今日こそは私の勝ちでチームに貢献したいという想いがとても強かったです。ダブルスも勝ってよい流れできたので、ここはしっかり勝ちたいと思っていましたね!勝ったときは信じられない気持ちでいっぱいでした。昨日と同じようなことをしてちゃダメだと思っていたので、勝てたのはラリーになる前の展開で先手を取れたことが1番大きいと思います。ラリーになれば五分五分だったので、それまでの展開にいかに自分が先手を取れるかが勝負で。そこで相手を崩すことができたことが勝てた要因だと思います!」と、第2マッチの平野選手との一戦の勝利の要因を分析して教えてくれた。

第4マッチ、木原選手に惜しくも敗れたキャプテン、佐藤選手だったが、会場を十分すぎるくらいに暖めた。ゲームカウントは1-3だったが粘り強く対峙する姿に感動を憶えた方も多かっただろう。マレッツを後押しする風が会場を渦巻く中、ビクトリーマッチに送り出されたのは横井選手だった。「平野選手と対戦した時は緊張がやばすぎて、ビクトリーはあんまり緊張がなかったんです(笑)出させてもらうからにはやってやろう!と思って試合に臨みました。相手の弱点をうまくつきつつ、1ゲームだけなので何が起きるかわからないと思いっきり勝負にいけたことがよかったです!」と前日の悔し涙から一転、今日は満面の笑みを見せた。「やっぱり攻めないと勝てないです、私の卓球は(笑)。今日2勝することができて自信になりました!マレッツの選手はレベルが高くて誰が出てもおかしくない状況の中で、私を出してくださっているので少しプレッシャーを感じることもあるのですが、最近はそのプレッシャーも楽しめることができています!」と明るく話す横井選手だったが、試合に出られず悔しい思いをしている先輩を慮った。

最後に大嶋監督はこんなことを話してくれた。「大藤選手、横井選手がそれぞれ成長できるよい風が吹いているなと思います。大藤選手にとって今日は痛い経験をしたと思います。でもその痛みは次につながる痛みですよね。逆に、横井選手は昨日痛い思いをしたから、今日の勝ちがあったと思います。色々と成長できる流れができていて、それに乗れている感じはしますね。ホームゲームはやっぱり特別です。会場の空気が選手の背中を押している、実力に加えてその力が積み上がっている感じがします。ファンの皆さんには、選手たちが成長していく姿を見てもらいながら、選手を一緒に育てていると思っていただき、その喜びを一緒に感じてもらえればと思っています」マレッツのホームゲームは特に応援が力になることを証明してくれているように思う。それは選手の力となって階段をまた“1段”登るきっかけになるに違いない。そして忘れてはならない。若い2選手の成長は、マレッツをしっかりと支える佐藤キャプテン、芝田選手、橋本選手があってこそだ。彼女たちのあくなき追及ともいえる成“超”も続いていく。長く、長く続く階段を着実に1段1段登る姿をこれからもともに見届けようではないか。
(Text by Naoco.M Photo by Yusuke Nakanishi)

☆Today's ONE Shot☆photo by Yusuke Nakanishi

ビクトリーマッチで勝利した瞬間、ベンチに向かって喜ぶ横井選手。横井選手の強さに圧倒されてシャッターを切りました。想像していた通りのカットが撮れたと思います。

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