日本ペイントマレッツ 3-1 京都カグヤライズ
【第1マッチ】芝田 沙季・大藤 沙月2-1 成本 綾海・工藤 夢(9-11/11-5/11-8)
【第2マッチ】大藤 沙月 3-1 枝廣 愛(10-11/11-9/11-8/11-10)
【第3マッチ】横井 咲桜 2-3 成本 綾海(11-7/10-11/8-11/11-9/8-11)
【第4マッチ】橋本 帆乃香3-1 牧野 里菜(11-5/11-2/10-11/11-4)
階段を1段ずつ登っている選手たちの映像が目に浮かぶ。その1段の高さはところどころ異なる。長く、長く続くこの階段を登る姿をわたしたちは今、目の当たりにしているのだ――
川崎での敗戦から1週間。どんな表情で会場に来るのだろうかと一抹の不安を抱いていた。誰よりも渋く硬い表情をしていたのは、意外な人物だった。大嶋監督だ。「めちゃくちゃ緊張して、胃が痛くなって…。大丈夫!と言い聞かせながらも、大丈夫そうなときほど気をつけろという想いもあって…。オーダー的には想定内ですが、やってみないとわからないですし、チーム全員でやっていくだけですね。結果のことは考えすぎず目の前だけみていきます」と自分に言い聞かせているように、また自らを何とか奮い立たせるように話してくれた。
絶対に勝たなければ、絶対に落とせない、そう気負いすぎるとプレッシャーの波に呑まれる。卓球の面白いところでもあり、怖いところでもある。
そんな波に呑まれることなく、階段を1段登った選手がいた。京都戦でのチームの勝利を引き寄せた大藤選手だ。「ダブルスとシングルスと両方出ると言われたときは、プレッシャーで…。朝も緊張していたんですけど、覚悟をもって臨むことができました。シングルスは、前までだったら相手が自分のボールに合っている苦しい展開で、そのままズルズルいってしまっていたんですけど、そこでいつもとは違う引き出しを1つ増やせて立て直せたので勝てました。引き出しを1つ増やせたお陰で、苦しいときにも余裕も生まれたんです。自分でも成長したなって思いました」“成長している”と自分で口にできる程、手応えを感じているのだろう。
試合前に一番緊張していたといっても過言ではない大嶋監督は「ホームで勝ててホッとした」と肩をなでおろした。「大藤選手の試合はどちらに勝利が転んでもおかしくない状況で、よく勝ちきったなと思いました。大きくなっていますよね。横井選手は日本リーグで成本選手に勝っていて、ここで勝ったら本物と思っていましたけど、まだまだですね。逆にいうと大きくなれるチャンスだと思います。どこかで勝てるかも?と思って臨むのと無心は違いますよね。それに心理状態もTリーグなのか、日本リーグなのかで全然違うと思います。一番悔しいのは本人だと思うので…。また明日の試合もあるので、相手が誰であろうとわたしたちはぶれることなく準備するだけだと思います」と大嶋監督は時折笑顔を交えて話してくれた。そして最後には「昨シーズンは最後の最後にプレーオフ進出を逃してしまったので、今シーズンは一喜一憂せず、最後に追い上げる気持ちで進んでいきます」と戦いが続く今後を見据えた。
どうしても一喜一憂してしまう。観る側のわたしたちにはその一喜一憂がまた物語にはなっている。階段の途中にどんな物語が生まれるのか。明日もまた新たな、そして大きな1段を登り、物語が生まれる予感をさせる。
(Text by Naoco.M Photo by Yusuke Nakanishi)
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