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【マレッツコラムスピンオフ企画】心がけが創る日常

お知らせ

一度は皆さんも悩まれた経験があるのではないだろうか?そう、ヒトとの“コミュニケーション”に。今の時代はそのツールも多様化している。対面時だけではなくデジタルでのコミュニケーションにも悩まなければならない時代だ。
今回のマレッツコラムスピンオフでは、大嶋監督にスポットライトを当て、コミュニケーションをテーマに伺ってみた。話を伺う中で、大嶋監督の人となりや指導者としての悩みなど様々な面を見ることができた。加えて、筆者は皆さんに本インタビューを通じて、日常生活に役立つヒントを見出していただければと願う。

「わたし自身、日常的に会話をするときには、できるだけ表情を柔らかくして玄関の鍵をあけているように心がけているんです」と開口一番。なるほど。初めて大嶋監督と会ったときに話しやすかったのは、そういう心配りがあったからだったのかと納得した。しかしながら、玄関の鍵があいていても、その扉を開けない時代がやってきている。「ひと昔前だと商業施設で赤ちゃん連れを見かけると話しかけていました。わたしが育った時代は、近所みんなで育てているような環境だったので、ついそういう感覚を持ってしまいがちです。でも今の時代は違いますよね。公共の場でコミュニケーションをとろうとすると、若い人たちは警戒心が強くて、逆に嫌な想いをさせてしまうのではないか?とも思います。自分の常識では図れないと感じます」確かに“見知らぬ人から話しかけられたら警戒しろ”と言われることも多い。そんなところにも気を遣わなければいけない今の時代、対面でのコミュニケーションの難しさがある。

難しいのはデジタルツールでのコミュニケーションも同様だ。「LINEやメールでのやりとりは相手の表情が見えないので、より神経を遣いますね。よっぽど親しい人を除いて、相手の状況、心境を想像した上でやり取りをする必要があると思っているので、言葉を選びますよね。デジタルツールによるコミュニケーションでは、相手との距離感を間違えていることもあると思います。わたし自身はとても親しい気持ちでやりとりしていても、相手にとってはそんなに親しくないということもあり得ます。だからこそ、送る時間も気を遣います。一方的に時間を問わず送れてしまうので、送りたいけれども寝ていたら起こすのではないか?と考えることもあります。矛盾するようなのですが、相手は見たい時に見て返事をするとも思うので、夜に送る際に一言「夜分にすいません」などと入れても、それは必要ないのかな?と思う自分もいるので、そうなるともう送れないですよね(苦笑)手軽で便利ではあるんですけど、LINEやメールの方が距離感も言葉も色々と考えなければいけないことは多いと思います」相手を尊重し、おもんばかる大嶋監督だからこその言葉だと思うが、やはり監督と同世代の方は戸惑うこともあるのではないかと想像する。生まれたときからデジタルコミュニケーションツールがある世代とはやはり感覚は異なるだろう。筆者は昭和最後の生まれでゆとり世代といわれる世代だ。“デジタル化”が進むとともに成長してきた為、今のようには発達していなかった。そんなこともあり、大嶋監督の言う難しさも理解できる。

そこで、選手たちと接する中で感じる“世代間ギャップ”についても尋ねてみた。「特に感じるのが、同じ言葉でも捉え方が違うということでしょうか。言葉の意味もどんどん変わっていくので、昔と表現、意味、使い方も変わってきていますよね。同じ言葉なのに正反対の意味で選手が捉えていると分かった時には衝撃的でした。例えば『大丈夫です』『いいです』というような言葉です。選手たちは“不要です”という否定のニュアンスでもこの言葉を遣うんですよね。最初は本当にわからなくて…。何か嚙み合わないなと思ったら、こちらが受け取った意味とは真逆の意味で使われていました。LINEなどの文面だったらニュアンスもわからないんです。各世代でどのような意味を使っているかアンテナを張る必要性がありますよね。勉強し続けなければならないなと感じるところの一つですね」指導者だからこそ大嶋監督には歩み寄る姿勢が特にあると感じる。試合後のコメントや普段話を伺うときにもいつも感じるのが選手への優しさだ。ただ優しいのではなく、厳しさも含めてどう選手に寄り添うかということを常に考えていることが伝わってくる。

話を聞き進める中で、少し気になる言葉があった。「選手たちだけではないと思うのですが、日本では詰込み教育が多いと思うんです。だから想像力に欠けることが多いと感じます。卓球もある程度のレベルまでは、指導者が一方的に教えて詰め込んで…ということで結果は出るんですよね。特に女子選手の場合は、指導者の言うことを素直に聞く選手も多く、それで伸びる選手も多いです。でも、一定のレベルまでいくとそれが通じなくなると思っています。試合中にアドバイスできるのは1分だけでそこで全てを伝えられるわけではないです。相手は変えられないので、自分に原因を求めてそこを解決したり、変えていったりして打開していくこと、そして相手の戦術や心理を想像してどう対峙していくか、自分で考えて実践していく力も必要だと思います。だからこそ普段のコミュニケーションから、言葉通りの文面で本当に受け取ってよいのか?真意は何なのか?色々な相手のことを想像していく必要があると思っています。」日常会話も卓球に通じている。だからこそ普段の生活にも気を付けてほしいと願う姿が垣間見えた。そしてこう続けた。「わたしたち指導者も伝え方には気を付けなければいけないんですよね。勝手に伝わっているだろうと思い込んで、話が長くなってしまうと、重要なことが結局伝わっていないということがあります。また、選手が理解し辛い表現を用いてしまうと、自分がしたジェスチャーから意味を解釈して、思っていたことが全く伝わっていなかったということも経験しました。子育てと同じでわたしたちが関われる時間も限られているので、毎日が試行錯誤の連続です」と日々の葛藤も口にしてくれたが、最後には「投げ出したくなる時もあるんですけど、諦めたら終わりなので、これからも時代に合わせて学び続けないといけないですね!」と背筋を伸ばして前向きな言葉を残してくれた。

ちょっとした心がけの積み重ねが良質な日々を創っていく。そう感じたひと時だった。言葉を発する前に、送る前に、一度立ち止まり、本当に伝えたいことは、この言葉でその人へ伝わるのだろうか?と、想像してみたらどうだろうか―― そんな日々が増えてくると、きっと今まで見えなかった世界が目に入り、小さな幸せを感じられる日が多くなるように思う。今までより豊かな日を過ごせる気がしてならない。日常のヒントをここから受け取っていただければ幸いだ。
(Text by Naoco.M / Photo by Yusuke Nakanishi)

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