2/4(土)日本ペイントマレッツ 3-1 京都カグヤライズ
【第1マッチ】佐藤 瞳・橋本 帆乃香 2-0 ウェイ ウェンション・マー ユーハン(11-5/11-10)
【第2マッチ】芝田 沙季 2-3 ユエン シュエジアオ (5-11/11-8/10-11/11-5/11-13)
【第3マッチ】大藤 沙月 3-1 成本綾海(3-11/11-9/11-10/11-5)
【第4マッチ】橋本 帆乃香 3-0 ウェイ ウェンション (11-8/11-8/11-7)
ふと名将、野村克也さんの言葉が浮かんだ――“重荷があるからこそ、人は努力するのである。重荷があるからこそ、大地にしっかりと足をつけて歩いていける” 選手それぞれが勝利という“重荷”を背負って戦いに臨んでいる。だからこそ、だからこそ、この試合をどう迎え撃つのか――いつもにも増して気が気でなかった。全日本卓球選手権大会から約1週間。結果に関わらずTリーグの試合はやってくる。戦いの場は違えども“試合”という場は同じだからだ。
第1マッチの2ゲーム。10-7とリードしマッチポイントを迎えていた。「あと1点」そう思えば思うほどあと“1点”が遠のいていく。だが、今日の“ひとほの”ペアは魅せてくれた。「10-10に追いつかれたとき、実はめっちゃ緊張していたんです」と話したのは橋本選手。今シーズンは幾度となくこの1点を落とし、掴みかけていたダブルスの勝利がするりと零れ落ちた。「マッチポイントになってから、攻めて失点していたので、逆に10-10の時は守り切ろうと吹っ切れたんです。話してはいないんですけど、きっと佐藤さんも同じ気持ちだったはず!違っていたら面白いですけど…笑」と話す橋本選手から笑みがこぼれる。佐藤選手にも同じ場面の気持ちをこっそり尋ねてみた。「あの場面は、いける!いける!まだ自分たちの方が有利!と思ってやっていました。頭で考えすぎて決めてやらずに、目の前の相手を見て雰囲気を感じて直感でやろう、そんな感じでしたね」2選手が発した言葉は違ったかもしれない。でも、二人がともに “思いきった”ことが勝利に繋がったのだろう。攻める思いを断ち切り、思いきって相手にを打たせることに集中した橋本選手。よぎる悪夢を断ち切り、自分の直感を、思いを信じきり思いきったプレーを選択した佐藤選手。唯一無二のカットマンペアが魅せた阿吽の呼吸は、勝負の2月にひと花沿えることを予感させた。
今シーズン、背負う“重荷”にもがき続けていた選手がいる。佐藤選手だ。「今日の試合は絶対にいける!という根拠のない自信がありました。全日本でいい試合ができていたこともあり、いいイメージを持って臨むことができました。ただ、Tリーグは短期決戦で全日本とは異なる難しさがあるので、その点は頭にいれてプレーしようと思っていました。実は、ビクトリーマッチも任されていたんです。今までチームのみんなに助けられてきた分、まわってきたら今日は絶対に勝つんだ!という気持ちで準備していました。結果的には橋本選手が勝ってくれたので出番はなかったですけど…笑」その言葉からは、大きな“重荷”を背負いながらもしっかりと前を向いて力強く歩いていく佐藤選手の姿が見えるようだった。誰かが苦しい時には自分が勝つ、チームの勝利のために――“チーム一丸”という言葉が2月を戦う鍵になる。
一つ、どうしても気になることがあった。全日本卓球選手権でシングルス3位と結果を出した横井選手を起用しなかったことだ。その理由を大嶋監督に尋ねてみた。「今日はこのオーダーがベストだろうという判断でした。初めて対戦する選手に対しては、大藤選手の方が安定していることも理由ですね。それに・・・」少し考え、再び口を開いてくれた。「結果が出た後って怖いんです。全日本で勝ったんだから勝たなきゃいけない…と思うと急に勝てなくなることもあるんです。結果が出たからこそ未知数ということもあり、今日のオーダーにしました」なるほど・・・。自分が監督だったらきっと横井選手を起用したくなる。大嶋監督は横井選手のこれからも見据え、未知の“重荷”を少し軽くし、奮起を促すよう既知の“重荷”を与えたのかもしれない。
技術だけではなく精神面も勝敗を左右する。それはより高みに近づくほど。“重荷”を背負いすぎ、限界だと思ってしまうこともあるだろう。でも、視点を変えればその限界は限界でないことに気付け、“重荷”を力にかえていける未知なる道が広がる。選手それぞれの“重荷”を背負い、運命の決まる2月を一丸となって戦っていく。
(Text by Naoco.M Photo by /T.LEAGUE/AFLO SPORT)
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