【1回戦】
芝田 沙季 4-1 麻生 麗名（12-10/11-5/11-6/9-11/14-12）
佐藤 瞳 4-1 由本 楓羽（11-6/11-7/11-3/6-11/11-9）
横井 咲桜 2-4 成本 綾海（11-5/7-11/7-11/11-7/9-11/9-11）

【2回戦】
芝田 沙季 4-0 長﨑 美柚（11-8/11-6/11-6/11-6）
橋本 帆乃香 4-3 張本 美和（11-7/11-8/9-11/11-13/8-11/14-12/11-5）
大藤 沙月 1-4 平野 美宇（6-11/11-7/7-11/1-11/9-11）
佐藤 瞳 0-4 安藤 みなみ（9-11/6-11/8-11/7-11）

【準々決勝】
芝田 沙季 4-3 伊藤 美誠（7-11/11-2/12-10/6-11/7-11/11-6/13-11）
橋本 帆乃香 0-4 平野 美宇（4-11/6-11/10-12/6-11）

チーム戦しか経験のない筆者にとっては違和感しかなかった。どうやってチームを応援するんだ？と。同じく迷われた方もいるかもしれない。一方、その違和感すら“面白さ”となる試合の連続ではあったのだ。これこそ、それぞれが“チーム”と“個人”両方を背負って戦う、Ｔリーグ初の個人戦だ。

昨日組み合わせ抽選後、選手たちは冷房設備のない暑い空間で、大粒の汗を流しながら調整をしていた。プロなのにこんな過酷な環境で調整しなければならないのか―― いや、プロだからこそどんな状況や環境においても最高のパフォーマンスを発揮することを求められるのかもしれない…。そんなことを考えながら調整する後ろ姿を眺めていただけに、皆、勝ってほしいと願わずにはいられなかった。

いつもとは異なる会場の雰囲気もあり、それぞれ初陣は緊張していたように感じた。
1回戦で成本選手に敗戦を喫した横井選手。ベンチに入った村田コーチは「2-2で迎えた5セットめの9-9が勝負の分かれ目だった。相手のサーブを取れていたら…」と悔やんだ。横井選手自身は「悔しい」と一言放ち「攻めなければいけないと思い過ぎて、相手を考察しきれなかった」と振り返った。
2回戦から登場した大藤選手は、昨シーズンのプレーオフファイナルと同じく平野選手と対峙した。「意気込み過ぎて気合が空回りした」と大藤選手。「迷いがあって中途半端になってしまい、自分のペースで試合を運べなかった」と話す表情は“あの”時とは違う。「今年中には絶対リベンジします！」と力強く言葉を放った。きっとこの宣言は実行してくれるだろう。
1回戦は由本選手に危なげなく勝利し、2回戦に進んだ佐藤選手。この試合では安藤選手の積極的な攻撃に苦しんだ。「今、プレイスタイルを見直しているところ。時間はかかると思うが…」とベンチに入った大嶋コーチが話す言葉には、更にパワーアップする確信があるようだった。レギュラーシーズンでは新たな“佐藤瞳”スタイルを観られることを楽しみにしたい。

初陣で約1時間40分の死闘を繰り広げたのは橋本選手だ。2-3と張本選手がリードし迎えた6セットめは、まさに息をのむ戦いだった。一進一退でどちらも譲らずデュースに突入してからは、橋本選手の経験と気力が上回ったように感じた。体力のある橋本選手だが、試合後はいつもより疲れている表情に思えた。準々決勝では平野選手に対しストレートで敗戦を喫した。ベンチに入った大嶋監督は「2回戦“疲れ”はあったが、それを意識し過ぎてアップをやり込めなかったこと、そしてコートが変わって床や見え方も変わること、それらの準備不足は反省点だ」と話した。それでも、平野選手との差は以前からは縮まってきていると話す。「3セットめくらいの状態で最初からやれれば十分に戦えるし、点差ほど差は感じていない。練習の方向は間違っていないと確信できたので、次はリベンジしてくれるでしょう」と前を向く。

正に“台風”を個人戦に巻き起こしたのは芝田選手だ。初戦前は緊張している様子だったが、初陣を飾ると肩の力がよい意味で抜けたような気がした。2回戦を快勝するとその勢いのままに準々決勝へ挑んだ。伊藤選手とは昨年の世界選手権、今年の全日本選手権でも勝てなかった相手だ。今回こそは！と強い気持ちで挑んだ芝田選手。「ミスをしてしまっても、すぐに切り替えて自分を信じて思い切ったプレーを心掛けた。一本一本自分の力を後悔しないように出す、そんな思いでやっていた」と振り返った。試合直後は今までに味わったことのない「無」の感情だったとか。集中した先にある安堵の境地はまさに「無」なのかもしれない。明日の準決勝は、大藤選手、橋本選手に勝ちコマを進めた平野選手だ。マレッツのキャプテンにチームメイトの無念を晴らしてもらおうではないか。